スリランカ滞在中、Uva Halpewatte Tea Facotryを訪れました。
工場内を見て回りながら詳細な製茶プロセスを伺うことができたので、紅茶が出来上がるまでを写真や動画と共にまとめておこうと思います。
3つの紅茶製法
紅茶の製法は3つに大分されます。
- オーソドックス製法
- アン・オーソドックス製法
- セミ・オーソドックス製法
オーソドックス製法はその名の通り昔ながらの手作りの製茶方法・工程をそのまま機械化したもの。リーフタイプとブロークンタイプの大きく2種類の茶葉が出来上がります。
それに対し、アン・オーソドックス製法は、オーソドックス製法の揉捻→発酵工程(詳細は後述しますが、ざっくり言うと茶葉の細胞組織を破壊することで酸化発酵を促す工程)を効率化・時間短縮したもので、CTC製法とローターバン製法の2種類があります。どちらも、揉捻をより細かく・強く行うことで発酵を加速しており、出来上がった茶葉は香り・味わいが強く出やすいです。
セミ・オーソドックス製法は、上記2つの掛け合わせで、オーソドックス製法と同じ揉捻を行った後にローターバンにかけることで、製造時間を短縮します。
Srilanka Tea Board Statisticsによれば、スリランカの紅茶総生産量の約9割がオーソドックス製法です。
今回取り上げるHalpewatte Tea Factoryでも、オーソドックス製法で紅茶が製造されています。
紅茶製造プロセス (オーソドックス製法)
1.萎凋(いちょう)-Withering/Semi-drying
工場に運び込まれてくる生の茶葉は、長い台の上に広げられます。ここでは、大型のファンで台の下から温かい風を送り込むことで、茶葉の水分を飛ばし、水分量を約50%まで乾燥させます(*1)。
今回訪問したHalpewatte Tea Factoryではこのプロセスに約10-15時間かけます。
一袋30kgを超えるので、これだけでも結構な重労働です。
*1 教科書などでは60%と書かれているところが多いようですが、今回スリランカで訪問した製茶工場ではどこも50%と仰っていました
2.揉捻(じゅうねん)-Rolling
茶葉に撚れを与えて、茶葉の細胞組織を破壊し空気に触れさせることで、酸化発酵を促す工程です。
Halpewatte Tea Factoryでは1台に約300kgの茶葉が充填され、1台につき30分間揉捻されます。
3.玉解き・ふるい分け -Roll Breaking
玉解き・ふるい分けでは、揉捻工程で塊になった茶葉を広げ、平均的に空気に触れるようにして、酸化発酵を促進するとともに、ふるいにかけて大きな茶葉と小さな茶葉を選り分けます。
Halpewatte Tea Factoryでは前述の揉捻機は4ラインに分かれており、最初のラインの揉捻機が最も揉捻圧(押し潰す力)が弱く、2ライン目、3ライン目、4ライン目と圧力が強くなっていきます。柔らかく小さい茶葉は弱い圧力でもよく揉捻され小さな塊になることを生かし、ふるいでは大きな茶葉だけを選り分けて、より強い圧力で揉捻される次のラインに送り込むのです。これによって、小さな茶葉から大きな茶葉まで、それぞれが適切な度合いで揉捻されていきます。
4.発酵 -Fermentation
揉捻された茶葉は適切な温度と湿度下で勝手に発酵していきます。発酵の管理担当者は発酵時間(1-3時間)の間に茶葉を嗅ぎ、適切な度合いまで発酵が進んだかを確認します。発酵が足りなければ紅茶らしい水色やコクが足りなくなり、発酵しすぎても香りや味わいが損なわれ、水色も黒っぽくなってしまいます。
酸化発酵の度合いを都度、「香り」や「色」で判断し、適度な段階で次の工程に移して、酸化発酵を完全に止めなければなりません。
5.乾燥 -Drying
この工程では茶葉を95度・21分間熱することで、発酵を完全に止めます。この工程の中で茶葉の水分量は3%まで減少します。
また、ここまでの工程では茎などの不純物も含まれてしまっているので、静電気で吸着し、茎(スカスカで軽い)だけを選り分けていきます。この茎は肥料などに再利用されるそうです。
6.グレード分け -Sorting/Grading
まずは電動ふるいを使い、茶葉の大きさごとにグレードを分けていきます。スリランカの紅茶のグレーディングシステムについては別途コラム投稿しますが、基本的には紅茶のグレードは茶葉の大きさ(OP~Dust)で決められています。
茶葉の大きさごとに綺麗に分別されました。
ちなみに工場内の箱の色は茶葉の大きさ・グレードごとに分けられています。
次は、茶葉の重さ・密度で品質を分けていきます。同じ茶葉の大きさでも、茶葉自体に含まれる栄養や旨みなどの化学成分が多い(=品質が高い)ものほど重く、少ないものほど軽いことを利用して品質ごとに分けていきます。
下の写真右手側から茶葉を投入し、右から左に向かって風を吹きつけ茶葉を飛ばします。すると、重たい茶葉から手前(右手側)に落ち、軽い茶葉は遠く(左手側)まで飛んでいきます。
この機械では5レベルに茶葉を分けています。また、下に置かれた箱はすべて赤色で、OP/Pekoeクラスの茶葉を品質別に分けています。
さらに、次はカメラセンサーで茶葉の色合いを判定し、品質を選り分けていきます。最も高品質とされているのは「黒」、その次が「灰・グレー」のもの。茶色の明るいものは茶葉に含まれる成分が少なく、低品質のものとされています。
同じ茶葉の大きさでも、黒っぽい茶葉とグレーっぽい茶葉に分かれました。
7.梱包 -Packing
グレードごとに完成した茶葉は、同じバッチ(茶園エリア×茶葉を摘んだ日×グレード)のものと均一に混ぜられます。
バッチごとにまず2kgのサンプルが首都コロンボのSrilanka Tea Auctionへ送られ、品質をチェックされます。ここで出荷OKが出た茶葉は30kgの紙袋に詰められて本出荷されていきます。
生の茶葉100kgから、25kgの紅茶が出来上がるそうです。
おまけ
工場見学の後、テイスティングもさせていただきました。
標高1900m近い山の上にある工場5階からの景色は圧巻です。
いかがでしたでしょうか。
教科書で学ぶ内容ですが、実際に見てみるとなかなか大変な工程だなあと思いました。特に茶摘みはかなりの重労働で、私たちが日々口にするセイロンティーがこんなにもたくさんの人たちの労働に支えられているのだということを改めて実感しました。